香川大学医学部医学科における教育理念は、①幅広い教養と高い倫理観を備えた人間性豊かな医師・医学研究者、②自ら課題を探求し、それを解決できる高度な専門知識と技術、科学的思考力、判断力を備える医師・医学研究者、③地域に根差した医療人として地域医療に貢献し、地域における医学・医療の中核としての指導的役割を担うことができる医師・医学研究者、④国際交流や国際貢献のための幅広いコミュニケーション能力と国際的視野を持った医師・医学研究者、を育成することを目指しています。
この教育理念に基づき本学科を修了し、本学が送り出す学士(医学)として身につけるべき能力・態度の到達基準として、①言語運用能力、②知識・理解、➂問題解決・課題探求能力、④倫理観・社会的責任、⑤地域理解、を定めています。特に現在は従来と異なり、新型コロナ感染症に対する対応と予防策が大きな社会的問題となりましたが、感染防御の観点からも対策を十分に行い、一人一人の学生の対応能力の醸成と、充実した教育環境を作れるように、日々の対応や改善の努力を行っています。
医学科講座及び附属病院の専任教員約200名が中心となり教育にあたります。1年次では全学共通教育(教養教育)と並行して医学概論などの早期医学科目や専門基礎科目を設け、2年次からは専門基礎科目に加えて基礎医学科目の講義・実習を3年次前期まで行い、3年次後期から4年次にかけては統合講義(基礎医学と臨床医学を臓器別・疾患別ユニットに再編した授業体系)と社会医学科目を修得し、共用試験(Computed Based TestingおよびObjective Structured Clinical Examination)に合格すれば、4年次終盤から臨床実習生(医学)として附属病院での臨床実習を行います。
特色ある教育としては、1・2年次の低学年から「早期体験医学」「医学概論」「医療プロフェッショナリズムの実践」「行動科学とチーム医療」「医療倫理」などの科目が設けられ、地域医療やチーム医療が体験出来ます。研究医の育成や科学的思考の醸成を目的とした2年次の「医学と研究」の科目が設けられ、1・2年次の「早期医学実習」や3年次必修科目の「医科学研究」では自分で研究室を選択し、実際の研究活動に参加することが可能で、最近では在学中に研究成果を学会や英文論文等で発表も行っています。また高学年の臨床実習では、地域医療への関心を高めるため、附属病院のみならず、積極的に県内各地の医療機関での実習を行います。
6年間の医学教育課程は、医師・医学研究者に求められる基本的な知識・技能・態度を修得できるよう講義・演習・実習をバランスよく組み合わせた体系的なカリキュラムとなっていますが、さらに基礎学力及び臨床能力の向上、地域医療への貢献、医師国家試験対応など、社会の要請に応えるべく各年次の授業の改善が行われています。2014年度入学者からは臨床実習の時間数を大幅に増やす等のカリキュラム改革を行い、2018年に日本医学教育評価機構により国際基準に基づく審査を受け認証を得ました。
設備面では、講義の一部を収録し学内のコンピューターからいつでも映像授業として視聴できるe-learningシステムや、実際の医療現場で必要な技術を、シミュレーター等を用いて習得できる実習室(スキルスラボラトリー)を整備するなどして、充実した学習環境を提供しています。
医学科のカリキュラムはほとんどが必修科目で勉学には多くの時間が必要ですが、学生が自主的に行う様々なサークル活動などの課外活動はとても活発に行われています。また、学生の国際交流活動が活発であることも大きな特徴です。医学科ではブルネイ・ダルサラーム大学(ブルネイ・ダルサラーム国)、ロンドン大学・セントジョージ医学校、グラスゴー大学、ニューキャッスル大学(以上イギリス)、チェンマイ大学(タイ王国)、シンガポール国立大学(シンガポール)、河北医科大学(中国)等と交流し、短期留学プログラムにより毎年30名以上が海外で学ぶ機会を得ています。特にブルネイ・ダルサラーム大学やチェンマイ大学とは双方向性交流として、交流校からの受入プログラムもあり、学内においても留学生との交流が積極的に行われています。
教育及び学生生活に対する医学科卒業生からの評価や満足度は高く、卒後臨床プログラムも充実し、多くの卒業生が本学医学部附属病院を臨床研修病院として選択しています。本院ではその後の専門医育成の専攻医プログラムも充実しており、香川県そして全国の医療に大きく貢献しています。